
よく見かける「女体化」。あの男性キャラクターも、女性になっちゃえばハッピーエンドだよね?誰も文句言わずに結婚できるよね?ということで、性別を転換することで新しい楽しみ方が発見できる表現、「女体化」。
今回はこの二次創作における女体化という表現について考えてみましょう。
あのキャラが女だったら…? |
最近、ピクシブを見ていても「女体化」(あるいは「にょた」)や、「生理男子」などの表現を多く見かけます。
これは、主に既存のキャラクターの体を女性化して男性キャラクターと絡ませよう、というものですが、これを公式でアニメでやっている…と言えば『おそ松さん』に登場する“女子松”です。
今回は、アニメ『おそ松さん』に出てくる“女子松”を支点に、男性キャラクターの女体化について考えてみましょう。
1、どうして男が女になると腐女子は喜ぶ?
BLにおいて、やはりネックになる部分としては、「男性同士で公に結婚できない」という点ではないでしょうか。
法的にも難しいですし、海外でも同性婚が認められている場所は少ないです。
さらに、一緒に暮らしたとしても子供を作ることが叶わないため、折角愛し合って結ばれたのに、暖かい家庭を作ることができない、ということが挙げられます。
結婚して出産して幸せ…ということだけが幸せではないのですが、「相手の遺伝子を残すことができない」と悩むBLキャラクター(二次創作の中でも)もいることから、推しキャラが同性同士であるという壁に苦しむ女子が一定数いることは確かです。
CPにもよりますが、「受けの性別さえ女性であればすべて解決するのに」と思えるCPもあることなどから、少女漫画的なハッピーエンドへ持っていくために、女体化することによって解決する、という魔法を腐女子が手に入れたことは間違いありません。
2、「女子松さん」に見る男性の女体化
公式でキャラクターを女体化した、ということで最近の作品で代表的なのが『おそ松さん』における「女子松さん」ではないでしょうか。
あれを見ていると、とても他人事には思えません(女性として)。
実際、6つ子を女体化すると、ああいうことになるんだと思いますし、我々とも近しい何かを感じます。
中でも印象的だったのが、ピクシブでみかけた「カラ松×一松」の、一松の女体化。カラ松は女性の姿の一松(一子)に恋しますが、一松は交際を断ります。
そして、男性の姿に戻って「やっぱり男じゃダメなんだ」と泣きます。
腐女子はこの“相手の男性が性別の問題を抜きにして、中身を愛してくれるかどうか”という点を重要視していると思います。
「お前が女だから好き」というのは、現実の男性です。「お前が男だから好き」というのがホモセクシャルです。
「たまたま好きになったお前が男だった(もしくは女だった)」というシチュエーションを求めているのが腐女子なのではないでしょうか。
女子松さんの狙いは、「あー、いるいるこういう女子!」という臨場感や、「男性の女性化が好まれる」世相の反映、だと思いますが(女性版のダメな6つ子という意味で)、女子松さんの登場によって、“キャラクターを壊さないまま女子化することが可能”であって、“そういうのもアリ”ということが広まったのではないでしょうか。
3、女体化を許容する柔軟な世界観
女体化に関してはずっと昔からあったジャンルではありますが、それ自体が禁忌とされていた面もあります。
女体化することによって世界観が崩れてしまうからです。二次創作において、原作を無視してしまうことは“あってはならないこと”であって、テキスト無視に該当します。
まして、男性キャラクターを女性にしてしまうことを許せない人も多かったのが事実です。
しかし昨今は、同人活動の低年齢化も手伝ってか、自由な発想も許される空気があります。
もともと「こうでなければならない」というルールがなかった愛好家の集まりから広まった文化。
「こういうのもアリじゃない?」という発信側と受信側の柔軟さが定着しつつあります。
おそ松さんにおいては、女子松さんを公式にやってしまったことによって、「どうぞ」と間口をどんどん広げているように思います。
それが赤塚不二夫漫画らしさというか、なんでもありのギャグ漫画っぽさなのかな、とも思います。
年齢操作や女体化、男体化、男性キャラの妊娠、同じキャラクター同士のCPなど。
「本当は違うけど、もしこうだったらいいよね」という「もしも」の楽しみ方がどんどん増えることは、今後さらに腐女子の自由な発想が試されることになるでしょう。
最後に

ある人は「りんごと言えばくし切りだ」と思っています。
でも、輪切りにしてもいいですし、すりおろしてもいいわけです。
素材を美味しく調理する、という意味では、フライパンを使っても電子レンジを使ってもいいのです。
女体化というワードは、多様性の中のひとつの例でしかありません。
『おそ松さん』の中における「女子松さん」は、“世の中こういうのも流行ってるよね”という事象が反映された結果なのだと思います。
このように、今後もっと新しい切り口や調理方法が出てくると思うとワクワクします。


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